Room102 文学へのいざない~推理小説2 国内編

注) 下記の講座は終了しました

  • 岡本会場 2023年8月5日(土)
  • 岡本会場 2023年8月30日(水)

講習時間・参加費用

※会場別に異なりますので
 右の申込み欄をご確認ください

※終了後の交流会費用は別途

開講会場

岡本会場

三宮会場(レ・ヴィーニュ)

東京会場

申込方法

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キャンセルの場合

テキストの準備のため、キャンセルされる場合は開催日の3日前までにご連絡ください。
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サロン開講によせて

昨年のRoom93は推理小説1海外編であった。ポーの『モルグ街の殺人』が推理小説の嚆矢であること、クリスティの『アクロイド殺し』がフェアかアンフェアかの大論争となった叙述トリックであること、その他、江戸川乱歩の類別トリック集成などを学び、英国推理作家協会選出の100冊を紹介した。今回はその続編として、国内の推理小説について、小史、主要作家、そして古典的作品から近年の受賞作品まで174作品を紹介する。

推理小説の醍醐味は、読者による謎解きであり、それは作者からの挑戦状でもある。謎解きは、作者が巧妙に仕掛けた伏線から、論理的に、すなわち読者の勘や思いつきではなく、与えられた情報だけにもとづいて、演繹的に解答にたどり着かなければならない。そのことは、ノックスの十戒やヴァン・ダインの二十則にも詳しい。坂口安吾は実は推理小説のファンで内外の作品をよく研究していた。そして、自身でも『不連続殺人事件』という妙なタイトルの推理小説を書いて、読者への挑戦として、真犯人当ての懸賞金をかけた。のちに安吾が語ったところによれば、正解はわずか4人だけであり、そのうち完全正解は1人で物理学を専攻した人だったとのことである。オーナーも挑戦してみようということで、さっそく読み始めたところ、登場人物が多すぎてややこしいので、これはじっくりとメモを取りながら読まないといけないことがわかった。しかし、そんなことをしていると今回のサロンの準備に差し障りがあるので、今後の楽しみと相成った。

オーナーにとって、お気に入りの推理小説の作品は、江戸川乱歩傑作選の中にある『心理試験』だ。犯人の学生は警察に尋問されることを想定して周到な準備をする。まったく隙を見せない犯人に警察はお手上げ。完全犯罪かと思われたが、そこへ名探偵明智小五郎が登場する。犯人を追い詰めるシーンは見事である。まさに逆転の発想だ。乱歩の豊富な知識と創造力が発揮された傑作といえよう。NHKのシリーズ江戸川乱歩短編集では、満島ひかりが明智役だった。心理試験では犯人役は菅田将暉。トリックをみごとに暴かれた菅田は突然大笑いする(笑うしかなかった!)。すると、満島もつられて大笑いするという結末。面白い作品は、書籍でも映像でも、たとえ結論がわかっていても何度でも楽しめるものである。

今回のサロンの準備で、オーナーは、西洋発の推理小説が、文化も法制度も異なる日本でどのように受け入れられ、そして広まっていったかがわかって大変面白かった。みなさんが、このサロンを通して、日本人創作の推理小説をもっと楽しんでもらえたら、オーナーとしては苦労した甲斐があったということになる。